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(みつばちプロジェクト)
 心の酢 〜山梨県上野原市 戸塚醸造店〜
みみよりアーカイブ > 商品物語>心の酢

 2004年〜2012年の記事です。内容が古くなっている場合がありますのでご注意下さい。

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●工場見学

「心の酢」がつくられているのは、山梨県の上野原市。山梨県といっても、東京の西の端、高尾駅から電車で20分くらいの所です。

その上野原に、青苔寺(せいたいじ)という臨済宗のお寺があります。その青苔寺の住職さんの提案で始まったのが、この地でのお酢づくりの始まりです。天然醸造で作り続け、今年(2005年)で26年目を迎えました。
お酢づくりの前段階であるお酒づくりから、お酢の温度管理、ビン詰めやラベル貼りに至るまで、手づくりのお酢づくりです。

昔ながらの天然醸造で製造されているお酢は、西日本ではいくつか見られますが、東日本では、他にはないのではというほど、希少なものになってしまいました。
上野原で天然醸造のお酢をつくるにあたって、最初にお酢づくりの指導をされたのも、鹿児島学園正心女子短大の教授、早野靖之博士です。お酢づくりの権威とされる方です。

その、貴重な天然醸造のお酢をつくる現場を見せて頂くため、紅葉が映える秋晴れの下、戸塚醸造店の工場を訪れました。
お忙しい中、代表の戸塚さんが、快く案内して下さいました。

何から何まで手づくりで生み出される心の酢。

大事に大事に引き継がれてきた種酢。

●お酢のつくり方と表示の問題

ところで、お酢って、どうやって作られるのでしょうか?

米酢の場合、基本の流れは、まず、お米からお酒(日本酒)をつくります。そのお酒に種酢を加え、酢酸発酵させて、お酢にするのです。
アルコール発酵→酢酸発酵という順序です。

原料はお米なのですが、ここで問題なのは、1リットル中に、お米を40g使用すれば、合成酢ではなく、醸造酢の米酢と表示できることです。

ところが、実は、醸造酢の基準とされている“1リットル中に40g”といった程度のお米の量では、まともな醸造はできないのです。
もし、その程度の割合のお米の量でお酢をつくるとしたら、せいぜい、1.5%程度の酸度(通常は4%以上)にしかならず、とてもお酢といえるシロモノにはならないそうです。
では、一般的な大量生産のお酢をつくる場合、不足している酸度をどうやって補うのでしょうか?
それは、工業的なアルコールを加えてアルコール度数を高くしてからお酢にするのです。
アルコール度数と酸度は比例するため、アルコール度数を高くしておけば、酸度も高くできるのです。
これでは、醸造酢というよりは合成酢です。

お米と酵母によるアルコール発酵のみで、きちんと必要なアルコール度数を確保し、お酢をつくるには、1リットル中に200gくらいは必要だそうです。現行の表示制度で決められたお米の量では、お話になりません。
そして、1リットル中に40gの割合でしかお米を使用しないで、たった1日でつくってしまう大量生産のお酢と、200g以上使用し、最低2ヶ月かけてつくるお酢と、同じ“醸造酢”という表示で流通してしまうのです。表示だけで見分けることができません。

「心の酢」の場合、1リットル中に200~250gのお米を使用しているそうです。しかも、田んぼを直接見てきたという契約農家の無農薬米です。

●戸塚醸造店でのお酢のつくり方

お酢は、秋から春にかけて順次仕込んでいくとのことです。
まずはお酒づくり。
富士吉田まで、富士山の湧水である仕込み水(バナジウム水)を汲みに行き、原料米を契約農家から取り寄せ、仕込みを始めます。
お酒づくりに約1ヶ月。
普通の日本酒と違って、アルコール度数の高い(17~21度くらい)お酒に仕上げます。アルコール度数が、そのまま酸度に反映するためです。
ちなみにこのお酒、濃厚で、美味しいらしいのです。でも販売はできません。中にはン万円出すから売ってくれという人もいたそうですが。

さて、お酒ができたら、いよいよ、門外不出?の酢酸菌の活躍です。大事に引き継がれてきた種酢を用いて、良質な酢酸菌を増やし、少なくとも2ヶ月以上かけてお酢にします。
この酢酸菌、工場の建物のいたるところにいます。ここにも、そこにも。
窓ガラスにも雪の結晶のような酢酸菌の膜が。
知らない人は、“窓を掃除すれば”と、親切な助言をしてくれるそうですが、“ふいてもふいてもすぐ酢酸菌の膜が張ってしまうんです。”と戸塚さんは笑います。
そんな具合ですから、工場が手狭になっても、戸塚さんは、建て替えは難しいのでは、と悩んでいます。工場にすみつく、大事な酢酸菌を失ってしまうからです。
味噌屋さんや、天然酵母のパン屋さんと同じですね。

戸塚醸造店では、人が楽に中に入れるほどの大きなかめにお酢を仕込むのですが、そのかめにも、当然酢酸菌が住みついています。かめを並べている部屋にもいます。したがって、かめによっても、また、かめを置いている部屋によっても、お酢の味が微妙に異なってくるのだそうです。
部屋をそうじするときは、水だけで行い、洗剤は一切使いません。

このかめは、九州から運んできたそうです。先代の社長にお話を伺ったときには、“かめの値段より運賃の方が高くついた”と笑っていました。数多くある大きなかめは、九州で焼酎の仕込みに使われていたものだそうです。

戸塚さんは、仕込みをしたかめに、良い酢酸菌が膜を張ってくれるかどうか、気が気ではないそうです。なんでも、“悪い酢酸菌は強い”のだそうです。
工場を案内して頂いたとき、あるひとつのかめに張った酢酸菌の膜を見るなり、“これは良い膜です”と戸塚さんがおっしゃって、そのかめのお酢を味見をさせてもらいました。これが、美味しい!
お米と水だけで、これほど美味しいものを作り出すなんで、酢酸菌はエライ!と感心しました。

このかめの中で、酢酸菌はせっせと働いています。

お酢づくりのおもしろさに魅了され、天然醸造のお酢づくりを引き継いだ戸塚さん。

●新たな出発

それまで、「青苔寺米酢工場」という名前で行っていたお酢づくりを引き継いだのが、現、戸塚醸造店の代表をしていらっしゃる戸塚さん。
山梨出身の戸塚さんは、なんと、以前は銀行員だったそうです。
取引先として工場に出入りしているうちに、高齢になっていた先代のお手伝いをするようなり、お酢づくりのおもしろさにとりつかれてしまい、いつしか後継者になっていたそうです。

現場で、初歩からお酢づくりを学びました。最初は右も左もわからず、直接、大学の先生に連絡をとってみたりと、苦労したそうです。
“醸造学を学んだわけでもないし、自分は全部、五感で判断するしかないんです”とおっしゃる戸塚さん。膜の様子、発酵するときの音、におい、味…、五感を駆使してお酢の面倒を見ます。

現在、パートの方がいらっしゃるものの、戸塚さんが、あらゆる面に心を配り、奮闘されています。工場の配管までご自分でやられたとか。
機械らしい機械がない工場ですので、手作業での重労働が続きます。

“菌が仕事をしてくれているだけで、自分は何もしていない”という戸塚さんですが、これから、お酢を使った新商品も考えられているとか。楽しみです。


●「心の酢」の使い方

「心の酢」は、味に非常に力のあるお酢ですから、料理には少量用いるだけで、充分、お酢の役目を果たしてくれます。“なんだかもの足りないなあ”とお酢を足していくうちに、せっかくの料理がびちゃびちゃになってしまうことがありません。
一般的なお酢は、揮発性が強くなっているので、熱いものにかけると、香りも味もとんでしまいます。それに比べて「心の酢」は、少量で、香りと味が楽しめるのです。ですから、経済的であるともいえます。

料理研究家の黒川陽子さんによれば、“味が足りないとき、基本的に、調味料は足して使えるが、お酢に限っては足すことが難しい。だから、お酢はもともと味にパンチのあるお酢が使いやすい。酸っぱさを抑えたいときは、だしなどで割ればいいのだから”とのこと。
例えば、ポテトサラダにちょっと使うと、とても味が良くなったそうです。

「心の酢」ではありませんが、戸塚醸造店でつくっているお酢を、東京都の国分寺市の小学校が、給食に使用しているそうです。なんともうらやましい!給食です。
給食こそ、天然醸造のお酢など、本物の食材を使って欲しいものです。

なお、長期保存していると、お酢の色が濃くなることがあります。
一般的なお酢は、お酢そのものを加熱してしまいますが、「心の酢」は、ビン詰めしたあとに、蒸気によって、ビンの外側から熱殺菌します。したがって、雑菌は殺菌しますが、酢酸菌は生きているためです。

 

 

     

 

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