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 おちゃのじかん 〜時間を味わいに〜
みみよりアーカイブ > Cafe&Restaurant >おちゃのじかん

 2004年〜2012年の記事です。内容が古くなっている場合がありますのでご注意下さい。

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●穴山の穴場のカフェ(山梨県韮崎市)

周辺に、お店などほとんどない穴山。中央本線で、韮崎から2つ目の駅が穴山です。
東京方面から山へ向かう中央本線の下り列車は、韮崎を出発すると、それまでの甲府盆地の街の風景から、農村や山地の風景の中に入っていきます。

韮崎の次の駅は新府。なだらかな丘に広がる桃畑の真ん中の駅で、無人駅です。この、長くて、屋根も何もないプラットフォームで、ただ、ぼーっと時間を過ごすのも良さそうです。
そして、次の駅が穴山駅。やはり無人駅です。
その次の日野春駅。この駅がまたいい感じなのです。蒸気機関車が似合いそうな駅です。

この付近は、台地の上に丘のような地形が広がり、ただブラブラと歩くだけで、素敵な里山散歩になることうけあいのエリアなのです。
けれども、普段は観光客などほとんど見かけない、まさに穴場。
そんな穴場の穴山に、2004年10月1日、小っちゃな小っちゃなcafeがオープンしたのです。

この看板をたどっていくと、いいことが…。

この日のキッシュプレートは、自家製ベーコン・キッシュ、天然酵母パンのスライス、サラダ、スープ、黒豆ゼリー、お飲物。以上で1000円。

●南アルプスを眺めながら

2005年5月16日(月)午前11時。開店と同時に、「おちゃのじかん」を訪れました。

七里岩ライン(県道17号線)沿いに立つ、かわいい看板をたどっていくと、三角屋根の「おちゃのじかん」が見えてきます。
前日の雷雨のおかげで、ひたすら澄み切った青空が広がる日でした。

入口を入ると、まず、美味しそうな天然酵母パンが目に入ります。そのパンたちを横目でながめながら、お店の中を抜け、テラス席に出ました。
店内の窓からも、南アルプスの連なる山々を眺めることができますが、テラス席からは、残雪をいただく甲斐駒ケ岳を正面に見ることができました。その手前には、こんもりと、新緑に埋めつくされた谷が広がります。少しずつ色が異なる新緑の色も、とてもきれいです。

うぐいすが鳴き、新緑をわたる風がさざめき、五月晴れの光がきらめきます。
テラスのすぐ横にはヤマボウシが立ち、やさしい木影がゆれています。

ランチを注文して、テラス席でくつろいでいると、時折、中央本線を走る列車の音が遠くに聞こえてきます。
この日は、中央道を走って車で来ましたが、…休日の朝、起きて、まず天気を確認し、新宿へ出て、特急「あずさ」に飛び乗って、韮崎で普通列車に乗り換えて、進行方向左側の席に座って…と、想像をふくらましているところに、店主の清水さんが、キッシュプレートを運んできてくれました。

●手づくりのごちそうがいっぱい

「おちゃのじかん」では、コーヒー、紅茶(ポットサービス)、カフェオレといった“おちゃ”はもちろん、ランチも頂けます。

キッシュプレート、サンドイッチプレートなどのほかに、そば粉のクレープ、ケーキ、スコーンなどもあります。天然酵母パン、ジャムの販売もしています。
これら、みんな手づくりです。サンドイッチやキッシュなどに使われたりするベーコンも手づくり。料理を彩るハーブも、庭で育てているもの。

ジャムは、さくらんぼや桃など、季節によって手に入る素材を生かして作ります。山梨といばフルーツが豊富。山梨で10年近く生活して築いたネットワークを生かし、上質の素材を使用しています。この日は、無農薬のイチゴを使ったいちごジャムが並んでいました。辛口批評の常連の方が「このいちごジャムを食べるためにパンを食べる」と評価してくれたほど、美味に仕上がりました。

とはいえ、パンだって、ジャムに負けていません。酵母は、あこ酵母と自家製ブドウ酵母を使い分け、美味しい天然酵母パンを焼いています。
清水さんは、東京でパン・ケーキづくりの技術を身につけた後、近くの天然酵母のパン屋さん「アリコヴェール」にて、3年半ほど、オーナーから任されて天然酵母パンを作り続けてきました。
パンは宅配もしてくれるそうです。

ケーキは、3日前までに予約すれば、ホールのケーキも焼いてくれます。例えば、パウンドケーキ(ラムフルーツ、いよかん、抹茶黒豆、アールグレー、ナッツの5種類)や、シュバルツバルダー・キルッシュ・トルテ(チェリーの入ったドイツのチョコレートケーキ)などなど。

原材料も、国産小麦やオーガニックのナッツ類、アルミ不使用のベーキングパウダーなど、体にやさしい素材を使っています。バターは、すべて発酵バター。「やはり香りがよい」とのこと。
あらかじめ注文すれば、アレルギー対応のケーキもつくってくれるそうです。

スコーンは、プレーン、レーズン、チョコ、ナッツ、ライ麦、全粒のうち、4種類を用意。

店主の清水さん。
店内の白い壁は、環境に良いペンキを探してきて、自分たちで塗ったそうです。

●「おちゃのじかん」スタイル

縁あって紹介されたこの土地を、一目見て気に入り、ご自宅を建てたのが8年前。
その庭に、去年、「おちゃのじかん」を建てました。
職住近接。
ご家族で協力し合って、cafeを切り盛りされています。
皿洗いやそうじは、小学生と中学生の息子さんたちの仕事、ベーコンを作るのは旦那さんの仕事。お客さんに愛想をふりまくのは、愛犬のルミとマロンの仕事…。

清水さんの旦那さんは、平日は、東京で「日本国際ボランティアセンター」に勤めておられ、時々、2週間くらい、海外へ出かけるとのこと。先日もスーダンへ行ってこられたそうです。
忙しい中、週末は「おちゃのじかん」のホール担当になって大活躍。
「本人は、気分が変わっていいと言ってますよ」と清水さんが笑って話してくれました。

朝晩や、定休日も仕込みに追われて忙しいものの、「今のままが1番いい」とおっしゃる清水さん。大きな目標に向かってまい進するわけでもなく、人を雇って経営するわけでもなく、自分サイズで、淡々とやるべきことをやっている…。
そんな姿がcafeの落ち着きと心地よさの秘密でしょうか。


●時間を味わいに

地元のリピーターが多い「おちゃのじかん」。お話を伺っている間にも、楽しそうにおしゃべりしながら、パンやケーキを買って行かれるお客さんが出入りしていました。よそ者にはちょっとうらやましい光景でした。

毎日のようにコーヒーを飲みに訪れる方もいらっしゃいます。
「家でコーヒーを淹れなくなった」とは、その常連の方の弁。

たしかに、こんな素敵なロケーションで、こんなに居心地の良いcafeがあったら、毎日でも来たくなります。
冬の、一面が銀世界の時もいいだろうなと思います。

清水さん自身、「ゆっくりお茶をしているお客さんと、ゆっくり会話している時間がとても楽しい」と、話されています。

「おちゃのじかん」での時間を味わうためだけに出かけて行く…、遠方の方にとっては、素敵な休日の過ごし方になりそうです。

毎日の人も、特別な日の人も、「おちゃのじかん」はあたたかく迎えてくれることでしょう。

〒407-0263
山梨県韮崎市穴山町7063-1

「おちゃのじかん」での至福の時間。

     

 

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