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(みつばちプロジェクト)
 ひなぎく 〜カフェ・ギャラリー・古本〜
みみよりアーカイブ > Cafe&Restaurant >ひなぎく

 「ひなぎく」は、2008年9月23日に閉店しました。
  伝説のカフェと呼びたいと思います。

●道のり

JR荻窪駅西口の改札口を右へ出て(北側)、線路に沿うように吉祥寺方面へ歩くと、3~4分で、右手に白山神社の参道入口が見えてきます。その向かい、線路際に、“昭和30年代モルタル2階建”といった風情の建物があり、その2階にあるのが「ひなぎく」。

少々、急な階段を上り、ギィーと鳴る扉を開けると、ほの暗い灯りの下、カフェとギャラリーと古本屋さんが一体となっている「ひなぎく」の空間がそこにあります。一歩、中へ入れば、やさしく、静かで落ち着いた空気に包まれます。

この「ひなぎく」の開店に至る道のりを、後藤さんにお伺いしました。

「出会ったところでやれる範囲でやりたい」と、はっきりしたお店のイメージは持たず、場所も決めず、あせらず、飲食店の物件を探し始めて2年くらい経ったころ、当時ジャズバーだった、荻窪のこの物件を知りました。
ある夜、ギィーと鳴る扉を開けて、ジャズバーの暗い店内に入ったそのとき、格子窓の向こうを中央線が走り抜けました。その時の様子を思い出しながらでしょうか、「光が流れたんです…」と後藤さん。そして「ここならお店をやりたい」と思ったそうです。

現在の「ひなぎく」の店内からも、ひっきりなしに行き交う中央線、総武線、東西線の電車の光が、格子窓の向こうを、右に、左に、流れるのを眺めることができます。

通勤電車の光、
松本へ向かう特急の光…。

お話を伺った後藤さんと遠藤さん。

●食の世界へ

もともと医療系の仕事をされていた後藤さんが、食にかかわる仕事をされるようになったきっかけは、「口から食べられることの大切さ」だったそうです。
仕事における経験を通じて、口から食べられるという、その当たりまえのことながら、大切なことに気づかされたといいます。

「神保町あたりのうす暗い喫茶店が好きなんです」という後藤さんは、飲食店めぐりやケータリングなどをしながら、徐々に、食べものを提供する仕事に向けて動き始めます。
そして、「ひなぎく」の物件と出会って、一気にその速度が加速しました。

出会った物件の立地を考えて店の姿勢を決め、店内の段差を見てギャラリー併設を考え、厨房や照明の設備を見てレストランではなくカフェだと判断し、現在の「ひなぎく」が誕生することになりました。

●オーガニック・カフェ?

「ひなぎく」のメニューの一番下には、小さく、「食材は概ね有機栽培作物や有機飼料による食肉を使っています。」と書いてありますが、「ひなぎく」をよく利用されるお客さんでも、「ひなぎく」がオーガニック・カフェなどとは意識していないのではないでしょうか。
しかし、実態は、まぎれもなくオーガニック&ナチュラル・カフェ。

コーヒーは山口県の自家焙煎店のオーガニック豆使用、紅茶は静岡産でオーガニック、牛乳は東毛酪農の低温殺菌、調味料類も自然食品店で販売しているようなものばかり。
しかも、オーガニック&ナチュラルということだけが選択の基準ではなく、そこに、美味しさという、ゆるぎない基準が加わります。
例えば、コーヒーやお酒といった嗜好品の場合、オーガニック商品の多くが、味に余韻がないと常々感じていて、「味に余韻の残るものを探した」そうです。

これだけ質の高いものを提供しながら、なぜ、それを主張しないのだろうと思い、質問してみると、子どもの頃から、家には自然食品やオーガニックの食材が、ごくごく当たりまえにあって、それをことさら主張することなど、「気づかなかったんです」と笑って答えられていました。「これからは、もう少しPRしてみようかと考え始めているところです」とも。

メニューには、ベジタリアンマークがあります。お店の考えというよりは、お客さんの選択肢を広げるという意味で、「レンズ豆のベジタリアンホットサンド」などが用意してあります。

自家製ジンジャーエール。ジンジャー系のドリンクには2種類のシロップベースがあり、こちらはクローブ風味。奥はギャラリースペースです。

ブルーチーズとマスタードのホットサンドと、水出し珈琲(ホット)。奥は古本屋さんの「海月書林」。

●メニューから

現在、ごはんメニューは、主に土日に提供される「豆と野菜のトマト煮ごはん」(植物性のみの食材)と「鶏肉と豆腐のそぼろあんかけごはん」の2種類が中心になります。他にはキッシュや、4種類のホットサンド(天然酵母パン使用)などがあります。

ドリンクは、お酒をはじめ、メニューが豊富です。梅酒、ワイン、ウィスキー、日本酒、焼酎、泡盛、ベルギービール…。烏龍茶、あずき茶、黒豆茶、ざくろジュース…などなど。
そして、果実酒や自家製ジンジャーエールのように、つくれるものは基本的に手づくりです。
「試作を何度も重ねた末、結局メニューに載らなかったものも多いんです」。また、スタッフの誰がつくっても、「味がブレない」ということも必要でした。
それゆえ、晴れてメニューに登場したものは、そのひとつひとつが完成度の高さを感じます。

開店当初のこと。納得できるオーガニックコーヒー豆が見つからず、カフェなのに、4ヶ月位、メニューにコーヒーがない期間があったそうです。
ようやく焙煎したての、鮮度のよいオーガニックコーヒー豆を、少量ずつ送ってくれるところが見つかり、現在に至ります。
このコーヒー豆による水出し珈琲は、ホットもアイスもおすすめ。アイスは氷が別々に出てきますので、自分で注ぎながら至福の時を楽しめるのです。酔いそう…。


●スイーツ

「ひなぎく」のスタッフとして働いている遠藤さんは、もともと菓子職人。お客さんとして「ひなぎく」に来ているうちにスカウトされ、「ひなぎく」のスイーツを担当することになりました。

「素材に出会ったとき、その素材をどう生かしたらいいか考えます」という遠藤さん。えごまのシフォンケーキも、えごまに出会ったとき、シフォンケーキにしたら美味しいのではと、ひらめいたことから生まれました。
また、「形と味を組み合わせて作る」ため、形も大切にします。

ひらめいたイメージを実際にメニューに載せるまでには、試行錯誤を重ね、イメージを変化させ、調整していきます。時間がかかるそうです。
現在、「ひなぎく」のスイーツは、ケーキ類は、チーズケーキ系、チョコレートケーキ系、シフォンケーキ系などがあり、その時々の旬の素材などによって、内容が多少変わります。

クッキーは、その種類によって小麦粉を使いわけます。これは農林61号、これは南部地粉、これはセモリナ粉というように。
クッキーは5種類ほどありますが、粉からして違うくらいですから、それぞれはっきりした特徴があり、お客さんの好みも分かれます。

小さい頃、アメリカにいた経験があり、アメリカのお菓子作りの本に魅せられたという遠藤さんですが、自分のつくったお菓子を「ほかの人に食べて欲しい」という強い気持ちがあるそうです。そして、ふらりと訪れたお客さんに「美味しかった」と言ってもらえると「すっごくうれしいです」と、顔をほころばせて、本当にうれしそうに話してくれました。

ケーキ盛り合わせと紅茶。左から、プルーンのパウンドケーキ、スフレチーズケーキ、えごまのシフォンケーキ。

階段入口には、今週の展示の案内があります。横にはメニュー。

●デイジーワールド

後藤さんが、お話の最後に、「デイジー(ひなぎく)って、多様性の象徴なんですよ」と教えてくれました。
「いろんな人がいていいじゃないですか」。「カッチリ決めると自分が苦しくなる」。
…たしかに「ひなぎく」も、1つの空間にカフェもあり、ギャラリーもあり、古本屋さんもあります。

ギャラリーは、ものを作って見せたいという人たちに、気軽に手の届きそうな値段と広さで、スペースを提供できたらと始めました。カフェスペースから独立しているので、落ち着いて鑑賞できます。
現在、貸出し料金は、1週間で3万5千円。2週続けてだと6万円。半年先までは、予約でいっぱいとのこと。

開店から4年ほど経った2006年、「ひなぎく」は、古本屋さんの「海月書林」を迎えました。
最初はイベントとして、年1回、「ひなぎく」に出店していたのが常設となりました。ネット通販もする「海月書林」の実店舗になります。
こうして、現在の「ひなぎく」が誕生しました。

そもそも、カフェの準備段階から、臨機応変に周りの状況に対応してきた「ひなぎく」。
変化を受け入れ、そして自ら変化していく姿は、まさにデイジー(ひなぎく)。
今後、どのような花を咲かせていくのでしょうか?

     

 

 「ひなぎく」は、2008年9月23日に閉店しました。
  伝説のカフェと呼びたいと思います。

 

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