2004年〜2012年の記事です。内容が古くなっている場合がありますのでご注意下さい。

●直売所（FRESCO）が中心

横浜市保土ヶ谷区にて、約2.5haの畑を耕作する、13代目の農家、苅部（かるべ）さん。
30代の若き、プロの農家です。
横浜駅から直線距離にしてわずか6km程度。
ゆるやかな傾斜地に農地が広がります。

相鉄線の西谷駅北口から歩いてほんの2～3分。国道16号線を歩道橋で渡り、ファミリーレストランのガストの横を少し奥に入ると、苅部さんが営む直売所、FRESCO（フレスコ）はあります。
年間を通じて、販売される野菜は40～50品種。
イタリア語で“新鮮”という意味の名前がついた直売所は、文字通り、とれたての新鮮な野菜が並びます。

収穫した野菜の８割は、直売所で販売すると苅部さんは言います。
なぜ、直売所にこだわるのでしょうか？
それは、自らの立地条件をよく考えた上での決断でした。
野菜のブランド化が進む中、“横浜”という地名は、野菜の分野においては、あまり有利な地名ではなく、競争力が弱いということを痛感していたそうです。
そこで、どうしたらその“横浜”で生き残っていけるかを、自分なりによくよく考えた末、出した答えが直売所だったのです。
都市が近いということは、消費地に近いということです。ならば、できるだけ鮮度の良い野菜を、直にお客さんの手に渡すことができる、直売所がいいのではないかと思い至り、行動に移しました。

相鉄線西谷駅北口から徒歩2～3分です。

午後2時（月・金曜日）の開店前からお客さんが並ぶこともあります。お早めにどうぞ。

●鮮度、味、美しさ

FRESCOのテーマは、旬と露地野菜です。
旬を大切にし、旬からはずれるものは無理してつくりません。
お客様にも旬の説明を繰り返した結果、お客さんが“来年とれるまで待つわ”と言ってくれるようになったとか。
とてもうれしかったそうです。

苅部さんは、これからの農業は、ビニールハウスなどを利用した施設栽培が伸びていくだろうと予測しています。しかし、あえて、露地野菜にこだわって、農業を続けていくつもりです。答えはシンプルです。露地野菜が美味しいからです。

野菜の品種にも強い興味をもたれていて、伝統的な地野菜である、“西谷ネギ”を大切に育てたり、在来種という、昔ながらの種の栽培を試みたりということもされています。

さらに、新鮮で美味しいのはあたりまえとし、野菜の姿にまで気を配ります。
野菜の品評会にも、度々入賞されているそうです。

鮮度と味、そして野菜の美しさにまでこだわる姿勢は、ゆらぐことなく、苅部さんの、あるいはFRESCOの姿勢として一貫しています。

ある時、横浜でバーを経営している、苅部さんの友人の方から、苅部さんの野菜を使いたいという申し出があったそうです。初めは不安を抱えつつ野菜を提供していたといいますが、今では、“苅部家の野菜”として、すっかり人気メニューになっています。“苅部家の野菜”を注文すると、“野菜そのものの味を味わってもらいたいから”と、ドレッシングもソースもかけられることなく、塩だけが添えられているそうです。

●都市部での農業

都市部での農業ならではの苦労もあります。
例えば、騒音や臭い。
必要なときは、農薬も使いますが、早朝から散布のための機械の音をさせてはいけないと、機械の使用を控え、人が通る通勤通学の時間帯も避け、日中の散布は野菜に負担がかかるので避け…と、わずかな時間をやりくりして行っています。

なお、都市部の農業は、全国平均に比べると、かなり農薬の使用量は少ないとのことでした。
例えば、キャベツ。年2回収穫するとして、その2回の生育期間を合わせても、数回程度の量です。
里芋や、大和芋など、農薬をかけなくても十分育つ野菜は無農薬で栽培しています。

畑からは、富士山が見えます。そして振り返って反対側を見渡すと、横浜のランドマークタワーがすぐそこに見えます。
大都市の中心のすぐそばに、これだけ充実した畑と直売所があるのですから、周辺に住んでいる住民の人たちにとっては、本当にたよりになる存在です。
実際、開店時間の午後2時前にお客さんが並んでいることもしばしばだそうです。

夏野菜の畑は、直売所から目と鼻の先にあるので、いっぺんに収穫せず、売れるにしたがって、畑から穫ってきて補充するのだそうです。まさに鮮度抜群。

野菜をつくる人、売る人、買う人、料理する人、食べる人が、これだけ近い距離でつながることができるのは、都市農業の大きな魅力なのかもしれません。

最初の訪問は、2005年の12月でしたが、旬の野菜を求めに、四季折々、たずねてみようと思います。

FRESCO（フレスコ　ー　苅部さんの畑の直売所）

〒240-0052　神奈川県横浜市保土ヶ谷区西谷962

いかに品質の高い野菜を提供できるかを常に考え、実行するプロの農家、苅部さん。